内気で人見知りで話すのが苦手な社会人

不器用で内向きな人間の、日々の悩みや思考です

抗不安剤を飲んだ話③

処方されたセルシンは錠剤で、効果が軽いものだといわれていた。ただ、依存性があるのと耐性がつきやすいので、本当につらくて苦しいときだけに頓服で飲むように、決して飲みすぎないようにと言われた。だから、試したかったのはやまやまだったが、一方で怖さもあった。飲んだら依存症になってしまうのではないか。やめられなくなってしまうのではないか。廃人になってしまうのではないか。なので、本当につらいと思ったときに飲もうと、そういう時が来るまでは我慢しようと思って帰った。

 

その時は案外すぐ来た。仕事をしていて難しい交渉をしなければならない。かつ自分は不利な立場。それを直接やり取りしないといけない。プレッシャーにつぶされそう。そんなときにセルシンを飲んだ。一粒、水でぐっと飲んだ。口の中ですんなり溶けた。

10分くらい経つと、何となくふわふわしてきた。じわじわと効いてきた。いつもすごく汗をかくのがそんなにかかない。不安で足が震えるのが震えない。何だか不安そのものに麻痺した感覚だった。テンションが上がったりするわけではない。ただ、身体と精神を抑圧していたものが、少しほどけたような印象だった。

セルシンは僕にはとても効いた。交渉は比較的すんなり片付いた。セルシンがなくてもできたかもしれないが、とにかくあの緊張と不安を消し去ってくれたことは、本当にありがたかった。消し去るというよりは、感じない、麻痺する、そういう表現が合っている。そういった動揺をほとんど感じなかった。こんなことがあるのかと思った。変な動悸や赤面なく、上ずることなく、普通に話すことができるとはなんと素晴らしいことか。

それから何度かセルシンを飲んだ。肩凝りもすとんと収まった。不安も取り除かれた。あまり効かないこともあったが、大体とても救われた。生きるのが、楽になった。

 

続きます。